迷馬の隠れ家 はてな本館

旅好き・馬ぐるみゃー・オジアナヲタクな主婦の、雑多なコンテンツですw

農業と水利権の問題…

三重県亀山市下庄町の農業用ため池・北山池で7日、市民グループ「水辺づくりの会 鈴鹿川うお座」と小中学生、地元農家の人たち約30人が、池の水を抜く池干しをし、外来魚を駆除した。ブラックバスを違法放流されたため、2年前に続く再度の池干し。作業中の人たちから「許せない」との声が上がった。

 「男1人がゴムボートから魚を釣っているんですよ。『魚なんかいないよ』と声をかけると、『おれがブラックバスを放流した』と言う。注意すると『ため池は税金を使ってできたんだろう』って言い返す始末。本当に腹がたった」

 今年3月まで北山池水利組合の組合長をしていた宮村忠男さん(77)は今春ごろのやりとりを振り返る。2011年10月に組合と「うお座」で外来魚を駆除し、ときおり見回りに来ていた。以前から釣り人を見かけたため、「また放流されたんじゃないか」と心配していたと顔を曇らせる。(by:朝日新聞デジタル 2013年9月8日12:37配信、抜粋)

まったく、農業用水の溜池を、なんだと思ってるのでしょうか?ブラックバスブルーギルのスポーツフィッシングをやりたい一心で、無許可で放流するのは、言語道断。とはいえ、奈良北部の場合、溜池の一部が金魚の養魚場になってたりする事もあるんだが…

もちろん、農業灌水用溜池の一部を観賞用、あるいは食用淡水魚の養魚場にする場合、農家組合や各都道府県の保健所等の許諾が必要であり、実際に養魚場として使っている場合、その旨をフェンス等に表示する義務がある。実は、灌水用の溜池は、農家の水利を支えている部分であり、特に年間降水量が少ない瀬戸内や奈良北部等の稲作農家は、近隣の集落と共同で大型の溜池を管理していて、しかも溜池の利用は時間や量が決められている。したがって、自分の勝手に水田への給水はできない。逆を言えば、溜池の管理には、細心の注意を払っている訳で、管理担当でない者が勝手に水門を開けたり、異物(ゴミの不法投棄から入水自殺者の亡骸、果ては低レベル放射性廃棄物まで)の混入を防止する為の義務があり、また、害獣(特にカラス)の駆除や池の底に貯まる土砂の除去等…様々な管理を、自治体の土木課と連携して、常に溜池の保守をやっている。当然だが、溜池の上流部の農家では、溜池周辺の草刈りやゴミ回収は、ほぼ住民男性総出での作業になる。(もちろん、それ相応の手当が自治体から出るのだが、その金額は、雀の涙程度…)
つまり、農業の水源確保の為に、人工的に作られた貯水池である以上、本来は水棲生物が棲息する事は、あり得ない話であって、むしろ、河川から水路を引いているトコならいざ知らず、溜池から水を引いているトコでは、そこに生物がいると、水田に迷い込む事にもなりかねない。例えば、ここんトコ問題になっているミシシッピーアカミミガメが水田に入ると、折角の苗を齧ってしまう訳である。コウノトリやトキが乱獲された背景にも、日本海側の農家にとって、水鳥が水田に入ってドジョウやタニシ等を取るモンだから、その時に苗を踏むからだという事で“害鳥”扱いになってただけの話で、実態を考えれば、本来はエサとなる害虫を取る為に入ってるのに、その行為が丹誠込めて育てた稲を潰してると勘違いした事から、そうなっただけの話。
言い方を変えれば、溜池に致死量以上の薬物でも流せば、その溜池から続く用水路の流域は、確実に汚染される事になる。当然、その“終点”は天然の河川だから、上流部に外来種の水棲生物を放てば、下流域にある河川の在来種が絶滅する可能性が高まる。つまり、琵琶湖でブラックバスの駆除に躍起なのは、琵琶湖固有の在来種であるビワマスや日本古来からの水棲生物を食い荒らしている事と同時に、淀川水系でのイタセンパラ等の生態系をも守る為である。それは、どこの溜池でも同じ理屈であり、故に、本来は外来種であるブラックバスブルーギルを、人為的に放流しないのである。まして、専用の釣り堀として作った溜池であっても、雨や雪解け水で水嵩が増せば、池から適度に放水しないと、池そのものが決壊する…それに乗じて1匹でも稚魚が逃げれば、それが原因で、周辺の水棲生物の生態系が狂う可能性がある。事実、さっきも書いたが、溜池の一部を養魚場にしてるトコでは、雨が降って溜池の水嵩が増すと、飼育中の金魚や鯉が、水流に乗って池から逃げ出し、用水路で野良化する事がある。業者が回収できればいいのだが、殆どは回収されないまま、下流域の河川まで流れてしまう。それが原因で、実は下流域で“大繁殖”なんて事もあり得る訳で…
よって、このマナーレスなバスフェチは、途方もない勘違いと大罪を犯してる認識がない。もっと言えば、テレビやネットの釣行ネタの見過ぎだって事。漁業関係者だって、そこでの漁で生計を立てている以上、スポーツ感覚での釣りに関しては穏やかではない。だから、ルアー釣りを楽しんでる連中に対して目くじらを立てている訳であり、バスやギルを“キャッチ&リリース”でやられると、それこそ生態系が壊れる…その認識があるから、ごく一部の河川では、漁業組合からの許可無しでは釣りができない事になっているし、ルールとして、釣った魚は持ち帰って“処分”する事が義務付けられる訳である。(要するに、塩焼きにしてでも食べろって事w)そこんトコをわかった上で、それでもバス釣りを近所でやりたいのであれば、自分の土地で、しかも自前で専用の池でも作ればいい。自分達の食を支えている者を愚弄する者は、故に、食糧危機に瀕した時に後悔する事になるだろう…