迷馬の隠れ家 はてな本館

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夜行&寝台列車は、何故廃れたのか?

昨日起きた痛ましい夜行バスの事故。原因に関しては敢えて触れないでおくとして、一部のSNSで“寝台列車に乗れば?”とか“夜行列車の方が…”等という、かなり寝ぼけた意見が書かれているのが見受けられる。こういう意見の背景には、夜行バスに対する不信感が見え隠れしてる訳だが、実は寝台列車であっても、同等の…否、それ以上の危険があるって事を知らない人が多い。
昨今の列車には、“デッドマン装置”という緊急時列車制御装置(乗用車にも、同様のアシスト機能)がある訳だが、そんな装置があったとしても、列車の場合、保線がキチンと行われていないと、安全な走行ができない。お忘れの人も多いかと思うが、去年のJR北海道での脱線事故は、保線業務を怠った結果、線路幅の安全基準を満たさない区間ができてしまい、しかも車両重量に耐えきれずに高速走行中の貨物列車が横転した…いくら車両をキチンと整備できてたとしても、道路同様に保線の整備があやふやだと、事故は必ず発生します。
では、今回の本題…何故、夜行列車や寝台列車が続々と廃止に追い込まれたかと言えば、料金設定と車両の老朽化、そして、保線作業の時間確保が難しいという、鉄道であるが故の事情があるからです。まず、料金について話をすれば、国鉄時代からJRグループ各社は、近郊区間の普通車料金(ま、普通の運賃)とは別に、特急車両を利用するにあたって“特急料金”を設定してあり、更に座席指定を行う場合はその分の“座席指定料”が発生します。高速バスの場合、座席指定料込みで大阪〜東京だと、期間限定で900円、通常でも3490円(いずれもWILLER EXPRESSの場合)が最低料金で、最高でも8600円(JRバスドリーム号の場合)ですが、新幹線を利用した場合、運賃だけでも8510円にプラスして特急料金4730円(自由席の場合)…つまり、合計で13240円も掛かる訳です。(だから学生や貧乏な乗り鉄は“青春18きっぷ”を使いたがる訳で…w)寝台特急…この場合だとサンライズ瀬戸・出雲(←訂正しました…)という列車がある訳だが(東京行きのみ、逆方向は、時間の都合で大阪スルー扱いw)、コレを利用した場合、寝台料金として、運賃プラス9130円(B寝台)…合計で17640円掛かります。これだけぼったくる…もとい、料金が嵩めば、必然的に高速バスの方が割安感があるし、夜行(陸路)に拘らなければ、LCC航空(ピーチの場合、成田空港になるが、片道3790円、SFなら羽田着で片道7600円〜)を利用すれば、却って安上がりです。この様に、主要区間での料金形態で一番不利を受けるのは夜行寝台であり、しかも事前予約云々を言い出すと、余計に夜行寝台は、利用者が激減したのはいうまでもありません。(2014年3月現在での話。4月からは値上がりするから…)
では、どうしてこんな料金設定なのかと言えば、それらは全て、国労が悪い…もとい、保線や運行に掛かる人件費が莫大だからです。つまり、運行するにあたって、深夜業務である故に、運転士は2〜3人、検札業務や乗降確認等の車掌が2人、更に、寝台車の備品(寝具やスリッパ等)の交換や車内清掃の要員、これに駅での業務と保線要員がいりますから、それだけ分の費用がかかる訳です。“ニコニコ超会議号”を運行するにあたって、向谷実氏が企画を出したとしても、運行するJR西日本、およびJR東日本に客車牽引用の機関車を運転できる運転士が確保できないといけないし、まして車両を確保するにしても、殆どの寝台車両は客車…つまり動力を持たない車両ですから、各車両に電気を供給する為の電源車が必要になる訳で、この車両がボコいとエラい目に遭うのは、“超会議号”でNゲージを持ち込んで動かしてた連中なら、お察しの通りw しかし、この車両の整備に必要な経費をどこで捻出するかといえば、結局は“利用者の負担”って事になる訳です。そして、JR東海の場合、いくら東海道新幹線という“ドル箱路線”を保有してるとはいえ、できるだけ新幹線の整備に使いたい反面、在来線の保全はおざなりにできない事もあり、その兼ね合いで、できるだけ夜間の保線に時間を割きたい為、貨物以外の夜行は、できれば走らせたくないという思惑がある様で、この部分を考慮すると、寝台急行“銀河”が定期運行から外れたか、察していただけるかと思う。
こういった事を考えると、利用者自身が“列車運行に関する適正価格”として認める事ができなかった事が、夜行寝台が撲滅する最大の原因であり、また、鉄道会社としても、終夜運行を行うのであれば、それに似合うだけの保線時間を、昼間に設けないと“やってらんない”って事情がある訳で、その点、夜行バスは運転手の健康管理さえキチンとしていれば、どんな風にでも対応可能である事がおわかりいただけるかと思う。とはいえ、どんな交通機関であっても、運転士が、あるいは運行管理を行っている企業の者全員が、“利用客の命”を双肩に掲げている自覚がないから、安全が杜撰になる訳で、如何なる事があったとしても、そこに自分の仕事としての誇りと使命感を持って取り組まないと、やがて誰も仕事をしなくなるとオイラは認識しているんだが…。