迷馬の隠れ家 はてな本館

旅好き・馬ぐるみゃー・オジアナヲタクな主婦の、雑多なコンテンツですw

臨時営業、Kail's Bar“グランシャリオ”〜電車を憎むのはスジ違い〜

カイル(以下カ):アローハ、カイルっす。え、なんで“臨時営業”かって?いやね、マスターから前回のシリーズで取り上げれなかった“話題”について、ちょっとやってよと依頼されまして…
(カランコロン…)
おや…ようこそ、グランシャリオへ。
ジャスティ(以下ジ):こんばんは…えっと、今日はカルーアミルクで。
マーグ(以下グ):ういーっす、カイル、オレはマリブコーラで。
ジ:今回は、例の事件の話ですね?
カ:はい、ボク的にもこれはカチンときましたね。
グ:東京都内で頻発した、JR東日本の電気施設への連続放火事件だろ?
カ:8月中旬から9月にかけて、京浜東北線や中央線で頻発した不審火。特に、品川区内の変電所での放火は完全に業務妨害です。犯人はすでに逮捕されてますが、動機があまりにも勉強不足もいいトコで、大量に電気を使う鉄道こそ潰れたらいいと宣ってる時点で、許せませんね。
グ:そら、カイルの言い分の方が御尤もだな。鉄道が電気を使うのは、環境保護とエネルギーの節約のためだ。
カ:そもそも、JR東日本は、自前で水力発電所を持っていて、電力の一部はそれで賄っています。寧ろ、昔は民間の電鉄会社自身が沿線の工場や住宅地に電気を売っていた時代がありましたからね。
ジ:あ、それ初耳。どういうことなんだい?
カ:明治の中期から民間の鉄道会社…主に都市部での鉄道事業者は、元々は“電気軌道車”というカテゴライズで、当時の運輸省に対して事業認可を取っていて、当然ながら、その動力は、自前で発電所を設け、そこから電力を供給してた訳です。
グ:その草分け的存在が、京都市電だろ?京都市は、首都機能の東京奠都による影響で、街が寂れる事をどうにかして食い止めようとして、琵琶湖疏水を利用した蹴上発電所を作って、いち早く市電を走らせたんだ。その後、多くの民間鉄道事業者が、電気軌道車による運転営業を行ったんだが、動力としての電気の確保を目的に、殆どのトコが自前の発電所(主に水力)を設け、運営してたんだよな。
カ:特に関西では、その動きか活発で、余った電気を沿線の住宅地や工場に売電し、それで鉄道事業の足しにしてたという話がありますね。その後、国のエネルギー政策として、主に家庭用の電力供給に関して、地域別の電力会社に一元化するという方針に切り替わって、多くの発電所が鉄道会社の手を離れ、現在に至る訳です。
ジ:あ、そういう流れなんだ…で、“環境保護のため”ってのは、どんな経緯があるの?
グ:先に言えば、化石燃料を使って機関車を動かすよりも、電気を使った方が無駄が少ないって事だ。
ジ:えっと…それって、どういう意味っすか?
カ:戦後のエネルギー事情…というよりも、それ以前から、石炭の需要が供給以上に跳ね上がっていた事や、石油が日本では産出できない…正確には、必要な数量を自前で産出できない事情があり、SLやディーゼル機関車での輸送は、都市部だとその排気ガスによる大気汚染が尋常じゃない事もあって、次第に電気機関車や電車での輸送にシフトしたんです。
グ:あれはあれで情緒あるんだが、さすがに都市部で、しかも交通量がハンパねぇトコでSLが全力疾走したら、あっという間にNOxやPM2.5でノドやられるガキが量産されっちまうぜ。それに、SLを動かすのに必要な石炭の量があれば、それを発電に回した方が、電気機関車の能力上、輸送量が大幅に増えるって訳だ。現に、C52の重連でやっとな量の貨物でも、今のEF200なら1両だけで牽引可能だからな。
ジ:なるほど…じゃ、犯人はなんで山手線や京浜東北線の変電所などを襲ったんだ?まさかと思うけど、原発憎しでやったとか…
グ:全くもって、そういうこったなんだよなw 鉄道が大量に電気を使うから、しかも山手線の運転頻度が圧倒的だから、そこが廃止になれば、余計な原発を作らなくて済む…ってのが動機らしいんだよな。
カ:とんだとばっちりですし、原発が必要だったのは、都市部における大気汚染対策です。先程、マーグが言ってた様に、都市部での大気汚染の一つに、SLやディーゼル機関車も槍玉に挙がり、それで駆逐されたんです。非電化区間では今でも、ディーゼル軌道車やディーゼル機関車による運行はありますが、そもそも、東京や大阪などの大都会ではありません。もちろん、乗り入れ区間の関係で、今でも大阪駅にはスーパーはくとはまかぜびわこエクスプレスといったディーゼル軌道車特急が入線しますが、それ以外の列車は、特急だろうが普通だろうが、すべて電車です。
ジ:うわー、それって、本当にバカげた行為だなぁ。しかも、多くの利用者がいる路線を、単純に“電気食いだから廃止しろ”という事自体、トチ狂った話ですね。
カ:原発が稼働しなくても、この夏の電気需要が間に合ったのは、省エネ家電の普及と、太陽光やガスコージェネレーションシステムを小型化した自家発電ができる住宅が増えた事です。そしてなにより、原発が稼働してた事で休止してた火力発電所が稼働した事による供給体制の維持ができた事も、一つの要因になります。しかし、火力発電所を稼働させるという事は、それに伴う大気汚染は免れません。いくら、排煙機構に集塵装置や浄化装置が取り付けられていると言えど、塵も積もれば何とやら…です。
グ:そういうこった。そもそも、家庭での電気使用量が一番ひどいのは、そもそもスイッチがない冷蔵庫や、夜間に煌々と灯してる電灯、そしてオーディオ機器だ。もちろん、パソコンやその周辺機器もだけどな。
カ:という訳で、今回はそんな犯人に皮肉も込めて、電気ブランソーダで割ってレモンを添えたハイボールです。この“電気ブラン”は、今でも浅草の神谷バーで供される、ブランデーベースのカクテルです。現在では瓶入りで販売されてますので、一度、ストレートでお試し下さい。