もう23年か…

マーティ(以下テ):そんなに経つんだ…もう、ボクの“生前さん”に関して、若い世代は知らないのが殆どだよね。
エルハ(以下エ):阪神大震災も、教科書での出来事になってしまってる程だから、仕方ない話よ、それは。
テ:ま、ボク自身はそれ以前の話…か。
エ:そうだったわね…“こっち”から見てて、あの時、どう思った？
テ:一言でいえば、メディアの驕りが、更に加速したように感じたね。確かに、被災地じゃないトコでは“大スクープ”でも、そこの住民は実害を受けた上で、さらに晒し者にされたからね…どんな悲惨な情景も、結局、現場にいない人にとっては、単なる“娯楽”なんだと痛感したね。
エ:アタシもあの時ばかりは、あなたがいなくてよかったと思ったわ…あなたなら、真っ先に現場へ行くか、報道スタジオで仕切ってたかと思ったら、ゾッとしたわよ。視聴率を稼ぐために、過労死寸前まで働くのは、別の意味で不謹慎よ。

テ:…もしもし？
エ:あら、何かいけない事、言ったかしら？
テ:いや、いいんだよ…言わんとする事自体、ボク自身の生き様の否定じゃなく、ボクの性格上、そうしてたかもっていう予測だから。
エ:フフフ…最近、穏やかな性格になったんじゃない？
テ:そうか？ボクはいつも通りだよ。

エ:今年もお付き合い、ありがとうございました。
テ:1回お休みしましたが、今年も楽しめましたか？今年は春に熊本で直下型の地震が発生し、夏の天候不順と台風で野菜が軒並み高騰し、東京で政務活動費をめぐる一件で都知事選が突発的に行われ、更に、今上天皇が健康不安を理由に退位したいと申され、例年以上に激動の1年でしたね。
エ:でも、新幹線がついに北海道まで開通し、リオ五輪では驚異のメダルラッシュで大いに盛り上がりました。
テ:伊勢志摩サミットのついでという訳じゃないけど、任期中の米大統領として初めて、オバマ大統領が原爆の被災地、広島を訪問するという歴史的な動きがあった一方で、世界中がポピュリズムに傾き始めていて、各地での難民問題やそこから派生するテロ行為が目立つ、非常にきな臭い状況になってるのは否めない。
エ:そうね…互いを信じることと、思いに報いる事、そして“寄り添う”という人間らしさが、いつしか失われていってるように感じるわね。
テ:みんな、確証がないからそうなるんだと思うよ。自分自身がそれを示し、実践してこそ得られるモノなのに、それを頑なに否定してるから、そして、単純な事なのに余計な警戒や偏見で侮蔑する人が多いから、どうしても心が折れるんだよ。でも…
エ:他人を見下して優越感に浸ろうと思うほど、本当はとても惨めで、張り裂けるほど心が痛い…でしょ？
テ:どんなにバカにされたっていいんだと悟った時、心って、本当に強くなる…だって、自分自身の人生だもの。自分が選んだ答えが、例え“間違い”であったとしても、その事を悔やむよりも、前へ進んだ方がいい。それしかないんだもの、本当の答えって。
エ:だからあなたは、あの時、自分の運に賭けたのよね…それが“悲しい結末”になるとしても。
テ:後悔してないよ、今は…ね。
エ:あなたが変われたのなら、アタシもそうなるんでしょうね…どれくらい、時間が掛かるか、わからないけど。
テ:とにかく、来年は、本当に幸多き1年でありますように…ではまた。