迷馬の隠れ家 はてな本館

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いくらの醤油漬けが、何で“冷凍”で輸送されるか?

ここんトコ、生魚を食べて腹痛起こす、アニサキス食中毒(急性アニサキス症)が話題になってるんだが、情報の中身を見てると、調理過程や食材の鮮度を無視したモノを喰って“感染”してるケースが多い。特に海鮮丼…遠洋マグロを使用してる場合、まず感染するリスクは少ないのだが、近海モノの青魚や、通常なら加熱処理が必要な魚介類を、“鮮度がいいから”という訳わからん理屈で生食に回してるから感染する訳であり、また、咀嚼力が弱くなってる現代人に感染が多いのも、アニサキスは物理攻撃(?!)に弱いという事を知らない人が多いからである。もっといえば、昔の調理方法は、それこそ冷凍技術や人工的な保存剤がなかった頃から、様々な経験から生まれた技術であり、今でも全く通じる手法である事に気付かないとマズい。

特に鮭(あるいは鱒)の調理に関して言えば、アイヌ料理の手法こそ、実は“理にかなった”調理方法だって事に気付いてほしい訳で、その最たるモノが“ルイベ”と呼ばれる調理法である。作り方はいたってシンプルで、捌いた生鮭を塩水で洗った後、極寒の冬場に軒先に吊るして、冷解凍を繰り返す事で余分な水分を抜き、アニサキス等の回虫を駆除する事で、生に近い状態で食す事ができるという訳である。(塩水洗いをするのは、アイヌの食文化には、元々醤油がなかったため。)つまり、本来鮭は生で食すのは大変危険なモノだという認識が、アイヌ民族には備わっていた訳であり、だからこそ、加熱処理か冷凍保存という選択肢で食べていたことを意味してる訳である。(もちろん、長期保存を行うなら、塩漬けにしてから干す“鮭とば”ってヤツもある訳だが…)だから、鮮度のいいいくらが手に入っても、アイヌの調理法に基づけば、醤油漬けなんてのは、実は“もってのほか”な話であり、お粥の具材として用いるのが正しかったりする訳である。それが“チポロサヨ”という“いくら粥”である。あくまでも、オイラが知ってる作り方はアイヌ語講座で聞いた範囲なんでアレだが、雑穀粥が炊き上がる直前に、塩と生のいくらを鍋にブチ込んで、余熱で火を通すのだが、炊き上がりは仄かにサーモンピンクになるというw これも、ある意味ではアニサキス対策であると同時に、いくらを“生”で食べてはいけないからこその調理方法だって事に気付いてほしいのである。

では、よくデパートで開催される北海道展で、いくらの醤油漬けが大概販売されているけど、何で冷凍ブロックの状態で店頭に並ぶのかと言えば、一つは催事場には大型の冷蔵ケースの持ち込みができないという事情があることと、さっきも出て来た“アイヌの調理法”でないと、アニサキスを駆除できないからである。リンク先の厚労省の解説にもあるように、アニサキスは-20℃以下で24時間以上冷凍すると、感染力がほぼ失われるため、解凍して生に近い状態にしても安全に食べられるモノになるからである。つまり、醤油漬けを作った後、-20℃以下で急速冷凍し保存しとけば、鮮度を保持したままアニサキスを駆除することもできるという訳である。同じ理論で言えば、実はイカの塩辛も冷凍で店頭に並ぶのもそういう事であり、特に“沖漬け”と呼ばれる製法で作る場合、船上でいちいちアニサキスの目視・撤去なんてできないからこそ、出来上がったモノを急速冷凍し、それを持ち込む訳である。(松前漬けも、ホタテ貝柱や数の子入りの場合はコレと同じ理屈)

食中毒対策の基本は、とにかく“生”では食べないって事だが、昨今、メディアが生食の生鮮モノが美味いと風潮した影響で、飲食業や食品業界関係者が勘違いして提供してる事が多い。また、それを真に受けた視聴者(=消費者)が要求するモンだから、こういう食中毒が後を絶たないのである。もちろん、発酵食品でも調理の仕方によっては“失敗”してるケースもあって、それによる食中毒ってのも(レアケースではあるが)発生してる訳で、本当に“安全”な食事を考えた場合、それに似合った調理法や加工技術で取り扱う意識が必要となる。当然だが、食品アレルギーも一種の“食中毒”であることを認識せねばならない訳で、個人差はあれど特定のアレルゲンでアナフィラキシーショックを起こす可能性があるなら、それを排除した食材での調理が求められる訳であり、それ故に人工甘味料や代替品を使うことを念頭に置かなければならない…“自然派志向だから”といって、何でもオーガニックがいいとは限らないし、化学薬品アレルギーだから無農薬や有機栽培に拘る人もいる訳で、まさにそこは十人十色、体質的なこと故の“対策”であるからこそ、どれが“正解”なんてのはない。食中毒にも様々な要因があり、それを考慮した上での調理法であって、そこんトコを間違えて批判したり、自分の意見こそが常識だと思ってはいけない。