迷馬の隠れ家 はてな本館

旅好き・馬ぐるみゃー・オジアナヲタクな主婦の、雑多なコンテンツですw

馬触りたいなら、観光農園に行けや!!

ここんトコ、SNS上で馬産地での“マナーレス行為”を散見するが、ま…オグリキャップが引退した直後でも、繋養先の優駿SS(と言っても、現在の場所よりも、もうちょい海側にあった頃)に見学者が殺到し、専用の見学スポットを急遽作った経緯があり、また、現在は閉鎖された日高SSでも、スーパークリークが繋養された際に、専用スペースを作って他馬と“隔離”する格好での展示が行われた程である。しかしながら、あの当時と同じ様なマナーレスな観光客がいる事自体、非常に嘆かわしい話であると同時に、単に“インスタ映え”する画像が欲しいからといって、生産牧場や種馬場で傍若無人する神経がおかしいと、同伴者が指摘しないのもどうかと思う…牧場見学に関してのマナーやルールに関しては、他のトコに任せるとして、ここでオイラが声を大にして言いたいのは、牧場は“テーマパーク”でも“動物園”でもないって事だ。もちろん、“観光農園”の場合だとその限りではないものの、馬産地の生産や育成を行なっている牧場や、繁殖種牡馬が繋養されているスタリオン(種馬場)は、そもそも競走馬を生産し、それを中央や地方の馬主資格を持ってる人に提供し、レースで走らせるための訓練を行う事が生業であり、本職である。したがって、本来は“競馬ファン”と称する“一般観光客”は、立入禁止な区域であり、そこんトコを特別に公開してるトコでも、見学時間や見学可能箇所等を決めた上で、本職業務に支障が出ないよう、見学者に対して、一定のルールを課してる訳である。そこを守れない時点で、それは“お客様”ではなく“業務妨害”をやる輩と同じであり、そういう“常識外れ”な行動が目に付く様になれば、せっかくの“観光資源”も“農家の生活保護”のため、観光客全般を締め出さなければならなくなる。

体験農業ができる“観光農園”では、体験の一つとして乗馬(といっても、係員引率による引き馬)や“にんじんタイム”と称したエサやり体験を組み込んでる訳だが、これはちゃんと、担当飼育員監視の下でできる事であり、特にエサやり体験を行うトコでは、予め、その分の給餌計画の下で管理されている訳である。つまり、放牧中のポニーでも、それは1日の給餌スケジュールに沿って放牧地の草を食べさせてる訳であり、余分なモノを喰わせると、運動量と見合わないカロリーを摂取したことになりかねない訳である。野生の馬なら、足元の草ぐらいしか食べないこともあって、そこまでの計算はしなくてもいいが、家畜馬の場合、そこんトコの管理が甘いと、際限なく高カロリーな飼料しか食べなくなる。ここでいう“高カロリー飼料”とは、主に豆類や穀物を指す…つまり、ロクに運動もせずにそんなモノばっかり食べてたら、食肉用ならともかく、人間同様に高脂血症脂肪肝といった生活習慣病になりやすいし、体重増加による脚部への負担も大きくなるため、それによる蹄葉炎(ていようえん:蹄と脚先の境目にあるひだ状の部分が炎症を起こす病気…罹患するとほぼ予後不良)を発症する可能性も出てくる。だから、競走馬でも脚部不安を抱えてる場合、脚部への負担を少しでも軽くするために、敢えて“痩身ダイエット”に勤しむ調教や給餌法になる訳である。(逆を言えば、脚部不安のない競走馬は、故に強めの調教をやっても平気だし、不良馬場で全力疾走もできる訳である。)

もう一つの“理由”については、家畜馬と言えど、“獣”には変わりないから、予測できない事態になると、人の手ではどうにもならないトコがあるってこと。見学会などのイベントで、特別に馬体に触れてもいいとなっても、注意散漫だと突発的な事故に遭う事がある。特によくある事故が、エサやり体験時の“注意事項”を守らなかったがために、指を欠損する怪我を負う事だ。スティック状の物体に対して、馬は本能的に“エサ”と認識する傾向がある。だから、エサやり体験でにんじんを馬に食べさせる際、できるだけ“握らない”様に注意される。にんじんスティックを“握った”まま渡そうとすると、その握った手も“にんじんの一部”と認識し、そのまま歯で齧ってしまう訳である。甘噛みでも馬の場合は、歯の形状が爪切り(ニッパタイプじゃなくて日本式のアレ)のような状態だから、噛みつかれる場所が悪いと、内出血だけでは済まされない。当然だが、エサを食べるつもりで噛んでる訳だから、運が悪いと指が千切れたり、手の機能が完全に失われるほどの骨折に至る。実際に育成牧場や乗馬クラブでの作業で、そういった不注意から手指欠損の障害を負うケースがちょいちょい出る訳で、冬場で厚着をしていても、腕や肩などを噛まれ、内出血を伴う筋繊維断裂(酷い場合は運動に支障が出るほどの重傷)を負う事もある。オイラも若い時に乗馬を嗜んでた頃があったが、馬装の際に左脇腹を噛まれた経験がある…当時はまだデブだったからこそ大した怪我にはならなかったが、噛まれる位置が悪かったら、肋骨2〜3本は折れてたと思う。(甘噛みだったと言えど、アレはしばらく悶絶するよ、いやマジでw)

更に言えば、感染症は馬にとっても、そして人にとっても不幸の連鎖でしかない。栗東美浦トレセン見学でも、入場時には靴底の消毒が義務付けされているが、これも感染症予防のためのモノであり、当然だが、馬産地でも本来であれば、そういった防疫対策を施した上での見学をやらないといけない訳である。さっきもあった“噛みつき事故”でも、日本の場合はそこまで深刻な話に至らないのだが、海外ではそれが因で狂犬病に感染するリスクが付き纏う。というのも、狂犬病ウィルスが家畜から撲滅している国や地域なんてのは少数派で、そのうちの一つに日本は入ってるため、家畜(特に犬や猫)を日本から輸出する時は問題ないのだが、海外からの輸入に関しては、狂犬病キャリア家畜でないことを証明する検疫が義務付けされている。当然馬も、検疫時に狂犬病をはじめとした、人間が罹患すると“致死率100%”な感染症を引き起こすウィルスに感染してないかを調べる訳であり、それ以外でも伝貧(伝染性貧血症:感染力か強い馬の疾患の一つ…一頭でも罹患馬が見つかると、牧場内にいる全ての馬が“防疫”を理由に殺処分される。)や馬インフルエンザ等、馬産地の死活問題になりかねない感染症に対する防疫に神経を尖らせている訳であり、故に、遠方からの“余所者”に対して警戒心が強い生産牧場も多い訳である。だから、放牧地への立ち入りも、本来は許可なしでやってはいけない行為であり、更に言えば、馬が警告を発してる(耳を後ろに寝かす、鼻にシワを寄せるなど)にも拘らず、無防備に近く行為は、自殺行為と全く同じです。(以前、オグりんがブロマガでも喋ってたが、最終的に体当たりや前肢スタンプ、全力でのバックキックを喰らったら、打ち所悪いと即死レベル…)

競馬場とかでのふれあいイベントとて、それは飼育員や係員が細心の注意を払った上で行えるモノであって、メディアやSNS上で著名人や記者が“名馬と戯れる”画像や動画を“情報”として上げてても、それは特別な許可を受けた上での撮影であって、訳のわからん“競馬ファン”が勝手にやる様なモノではありません。そういったことも知らずに、それでも傍若無人な振る舞いをやるのであれば、その“責任”は、常識を弁えた競馬関係者や善良なファンが負うことになるでしょう…自分達がやったことを、何も知らずに真似る不届き者を野放しにした罰として、“取材拒否”や“見学禁止”の処置を、生産者や牧場関係者が下したとしても。