迷馬の隠れ家 はてな本館

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襟裳岬から明日の漁業を学ぶ?!

今日の関西ローカルニュースで、大阪湾の沿岸漁業がヤバいという話をやっていた。水質ではなく、漁獲高が減っているのだ。原因としては、神戸空港関空の2期工事等の湾岸埋め立て事業や明石海峡大橋の関係で、大阪湾の潮流が淀んだ事や、周辺河川から流れ込むミネラル分がダムや護岸工事で激減している事、そして、その河川周辺の山林が宅地開発で荒れてしまい、それが巡り巡って“海枯れ”が発生してるとの事。
コレと同じ事例は、実は全国規模で発生してるようである。しかし、コレを“解決”する策はある。それは森林(特に雑木林)の“再生”である。ニュースでは気仙沼の漁業関係者の取り組みを挙げてたが、それを先駆してやっていたトコがある。そう、襟裳岬である。かつてこの辺りは、太平洋岸から吹き付ける風と共に、農地の乱開拓の末、海枯れも深刻で“襟裳砂漠”と揶揄される程ひどい環境だった。しかし今では、周辺の様似や広尾の海までも、その恩恵で漁獲高が上がってるという。

開拓される以前は、とても豊かな森が、この岬を覆っていた。そして、その周辺に住むアイヌにとって、とても重要な“生活の場”でもあった。
しかし、この周辺に来た本土からの移民が、自分たちの生活の為とはいえ、不用意に農地開発を推し薦めたのがマズかった。大規模な伐採で、貴重なクロマツやエルム(ハルニレ)の森が消失し、その結果襟裳岬の環境が一変した。現在でも海から吹き付ける風はキツいが、その強風で海岸の砂が舞い上がり、塩分を多く含んだ砂が、開墾したばかりの農地に降り掛かり、農作物を枯らしたのである。また、沿岸部の森が“消滅”した影響で、徐々に日高昆布の生育が悪くなり、“昆布の森”に生息していた魚介類がいなくなって、漁獲高も大幅に減った。
この事に気付いたある漁業関係者は、その対策法として、管轄の土木事務所に“森の再生”に関する陳情書を提出した。実は、この土木事務所も頭を悩ませていた。襟裳岬周辺の道路が、強風や高波による“交通規制”が頻発していて、それの対策でテンテコマイしていたのだ。そうして、双方の利害が一致したのを受け、当時の北海道知事経由で国に“襟裳岬国有林計画”を申請したのである。コレがおよそ50年くらい前の話である。
計画は、襟裳岬周辺の森を再生させ、“森の緑”で砂が強風で舞い上がるのを防ぎ、その森から出るミネラル分で海を豊かにするというモノだった。しかし、最初からうまくいくハズがない。さっきも触れたが、襟裳岬は年中、太平洋から吹き付ける風が強烈(風速10mなんてザラ)で、どんなに種を蒔こうが、若木の苗を植えようが、すぐに吹き飛ばしてしまう。
そこで一度は挫折しかけたのであるが、“ある方法”でこの“難題”を解決させたのである。それは、海岸に漂着した海藻と一緒に、種を蒔いたのだ。普通の植物は吹き飛んでしまう状況でも、海草類は砂浜に打ち上げられて干涸びても、その強風に吹き飛ばされない“特性”があった。この“性質”を利用したのである。(コレが後に、“襟裳方式”と呼ばれる海岸エリアの緑化、および周辺森林の再生方法のひとつとして、全国に普及する)
次に問題となったのが、植樹したクロマツ若木が枯れてしまうということ。せっかく、森を再生する“土台”ができても、その環境が“改善”されていない状況では、植樹するだけムダになる。そこで、一定の間隔を空けてみたり、植樹する区域の砂地に溝を掘って、土壌の通気性と水はけを改善した。こうして植樹したクロマツの“生存率”を高めた結果、徐々にではあるが“成果”が現れた。そのひとつとして日高昆布の質が上がり、それを“エサ”にしているウニやアワビが増殖し、それに伴う様にホッケやアイナメ等の沿岸部にすむ魚類が豊富に捕れる様になり、日高地方(特に浦河以東)や十勝地方沿岸の漁獲高が年々上がってきたのである。そして、襟裳岬に吹き付ける風も幾分穏やかになり、付近の住民からも“風害”による被害が減ったのである。
オイラもこの辺りまで行った事があるんで知ってるんだが、現在でもこの“森林再生”プロジェクトは続いていて、短い夏の間に、百人浜周辺を中心に植樹を行なっている。ただ、こういった涙くましい努力も知らずに、ウニやアワビの“密猟”を行なうバカが多くなった事が、最近の悩みだそうなw