迷馬の隠れ家 はてな本館

旅好き・馬ぐるみゃー・オジアナヲタクな主婦の、雑多なコンテンツですw

My favorite announcer vol.19

今でこそ、女性アナがスポーツ番組でメインキャスターを務めたり、種目によっては実況も担当する事は、ある程度認知されてきた訳だが、コレは改正労働基準法男女雇用機会均等法等の法整備が整ったからと思われる方が多い。しかしその裏には、そういった“法律の規定変更”よりも先に、その“男女の壁”を打ち破り先駆した女性アナがいる。時折このBlogで名前だけ紹介してきた、元RFラジオ日本の井口保子アナがそうである。今回はたまたま月刊誌で掲載されていたインタビュー資料が手に入ったので、キチンとしたカタチで紹介できると思い、ピックアップしました。

井口アナのサイン実は彼女には8年程前に、今は無きプラザエクウス梅田でのイベントで、サインを戴いた事がある。この写真は、その証拠である。この当時オイラが知っていたプロフィールと違って、とても女性らしく優しい物腰の印象がありました。

チャキチャキの江戸っ子で、葛飾出身。幼少期から演劇好き。その影響か、人前でパフォーマンスをやるのが好きで、学芸会では常に主役を張っていた程。そんな彼女は将来、女性でも“主役”を張れるアナウンサーになりたいと願っていた。しかし母親は、そんな事より教師としての生き方を選んでほしかったらしく、大学でも教職に就く為の勉強をやっていたそうな。
だが夢を捨てきれず、先輩の就職活動に付いて行き、そこでラジオ関東(現在のRFラジオ日本)の入社試験を受けたのが大学3年の頃の話である。当時は来春卒業予定でなくても試験を受ける事ができ、彼女としては来年の就職活動に向けての“腕試し”のつもりで受けたのだが、結局は先輩をさしおいて内定をもらったのである。
そんな訳でデビュー時は、まだ学生だったという事もあって、なるだけ学業に響かない様に夜間の仕事をメインに、音楽番組を担当していた。時には宿直勤務もあったんで、スタジオから大学に直接“通学”なんて事もあったとか。
そして数年後、ついに彼女は競馬と出会う事となる。きっかけはタニノハローモアが勝った日本ダービー。この時、同僚の競馬好きに誘われて、東京競馬場へ足を運んだのが“運のツキ”で、初めての競馬場で競馬のイロハもわからぬまま、パドックで目が合ったタニノハローモアからタケシバオー枠連(この当時は現在の様に馬券の種類はなかった)の1点、しかも間違って特券(この当時は購入金額によって窓口が分かれていた)での勝負に出たのである。周囲の同僚はこの時は笑い飛ばしたが、レース終了後は彼女以外は全員オケラ(馬券ハズレ)で面目丸つぶれw“コレは面白い!!”と味をしめて、以後競馬にハマったのである。そして“いつかは競馬の実況がしたい”と思う様になったのである。
この当時はご存知の様に、競馬は“社会悪”であり、とても女性が仕事できる様な環境ではなかった。しかも“実況アナ”となると、それこそ男性アナでも失敗すれば“干される”様なシビアな世界である。そんな“聖域”に足を踏み入れようと、彼女は当時の競馬中継スタッフに懇願したのだが、当然ながら“女性立入禁止”と言って拒否されたのである。当然といえば当然な話ではあるが、それでも彼女はあきらめなかった。“その日”の為に空き時間は競馬場で、しかも一般席で実況を練習し、何度もテープに録ってはどこがマズいのかをチェックしていた。とにかく、“実況アナになりたい”一心で、練習を続けたのである。
そしてその“願い”は、いつしか彼女に恋した“競馬の神様”のもとへ届いたのである。彼女が担当していた音楽番組のスタッフが競馬中継スタッフに異勤となり、一度で良いから実況させてやろうと企画を上げてくれたのである。その頃は競馬中継の聴視率はイマイチで、ただ番組のスポンサー確保と、実況アナの腕を鈍らせない程度の代物でしかなかった。そのテコ入れとして、彼女の実況を電波に乗せようという事になったのである。こうして彼女は、晴れて日本初の“女性競馬実況アナ”として、注目される事となったのである。実況デビュー時、物珍しさも手伝って、マスコミ各社がRFに取材要請が殺到し、当日放送席はちょっとした“お祭り騒ぎ”となった。そしてその実況が電波に乗ったとき、多くのリスナーが驚いた。その多くは“女性が競馬を実況してるなんて…“というモノだったが、それは非難する声ではなく、むしろ賛嘆の声だった。それから24年もの間、RFの競馬中継に欠かせない“名物実況”として愛されたのである。
この事がきっかけで、競馬サークルは関東を中心に、女性の活躍の場が広がった訳だが、RFはその流れに逆らう様に、彼女に“引退”を促したのである。今からおよそ10年前、当時RFの“労務規定”は、女性アナは定年が男性アナより短い設定(しかも延長なし)になっていた。コレに彼女は引っかかったのである。この事は後に彼女の同僚女性アナが労基法および機会均等法に違反するとして、民事裁判が行われたのである。(結果的には双方、和解した様だが…)その影響なのかどうかはわからないが、現在のRFは聞くに堪えない程、つまらない放送ばかりと聞く。
悔やまれるとすれば、現役時に一度でも良いから牝馬のG1(オークス)で実況している彼女の声を、CRK経由でも聞いてみたかった。関東で聞いてたファンからの情報では、彼女は一度たりともG1を担当させてもらえなかったらしい。しかし、彼女の“熱意”は、今後多くの女性アナの“可能性”を押し広げ、いつかは全国ネット(あるいはグリーンチャンネル)でのG1実況に結びつくと信じている。それは女性だからという“固定概念”を打ち破った彼女の存在が、現在の女性スポーツアナの“原点”である以上、いつかは実現してもらいたいモンである。(ちなみに彼女は、現在でも関東の女性競馬記者達から慕われています。)