Shin's Barへようこそ 2012 第二夜

シン(以下シ):そういえば、牝馬三冠のアパパネが、秋のG1目前に突然、引退しましたね。
ノブ(以下ノ):右前浅屈腱炎で、9月15日付で競走馬からの登録抹消で、今後は安平(あびら)ノーザンファームで繁殖入り…ま、妥当な選択やろうな。怪我を圧してまで競走馬として走らすよりも、早めに繁殖入りして、エエ仔を出してくれる方が、後々“名牝”として讃えられ易うなるからなぁ…
カイル(以下カ):そんなモノなんですか？競走馬って…
オグりん(以下栗):あのねぇ…むしろ競走馬として生まれたボクちんらにとって、レースにも出してもらえずに“廃用”となって、どこかの動物園に“飼料”として引き取られる方が殆どなんだお。乗馬クラブや観光農園等で保護されるのは稀だし、まして、競馬場の誘導馬としてスカウトされるのは、余程の事なんだお。牝馬の場合は、血統面での事もあって、まだ繁殖用になるけど…ボクちんみたいな牡馬は、成績が全て…まして、種牡馬となってもその産駒の成績がダメだと、その時点で“お払い箱”だお。
カ:工ｴｴｪｪ(´宮｀ﾉ)ﾉｪｪｴｴ工 肉食獣のエサになるって話は、本当なんだ…
栗:セリ市で買い手が付かなかった仔馬も、大半は食肉処理場行きだお。いわゆる“ニューコンビーフ”の原料になるか、競馬場で走るか、乗馬施設や観光地でコキ使われるか…でも、中には社殿の“神馬”として奉られるのもいるだお。
カ:え、そういうのもいるのか？

シ:ようこそ、Shin's Barへ。
マーグ(以下グ):おう…もう早速ノブは飲んでるのか…って、オグりん、なんでオマエがいんだよ？
栗:ボクちんだって、飲む時は飲むモンw あ、シン、ボクちんシードル。
シ:はいはい…
カ:それにしても、競走馬が“神馬”とはねぇ…
グ:カイル、悪いが…馬と人との付き合いの歴史を知れば、ごく普通の話だぜ。特に、貴船神社や上賀茂神社、下鴨神社は、馬とは切っても切れない縁があるんだぜ。
ノ:歴史ある神社では、神事として競馬をやってるトコが多く、奈良の春日大社でも、競馬神事はおん祭の際に挙行されるさかい、その歴史は、奈良時代以前からあったと考えられるんやで。
カ:え、日本の競馬って、そんなに古い歴史があるんですか？
グ:詳しく言えば、“競馬”と漢字で書いて“くらべうま”と読むんだけどな。そもそも、この“くらべうま”神事ってのは、天候の吉凶を占う神事であり、五穀豊穣を願うモノなんだ。あと、貴船神社での馬の意味合いは、白馬が“晴天”で青馬(黒い馬)が“降雨”を示し、赤馬(主に栗毛)は天変地異を指す…となってるんだ。だから、“くらべうま”での結果は、即、農耕民族だった古代の日本人にとって、そのまま一年の吉凶を意味するモノとして、重要視されてきたんだ。
ノ:ただ…西洋の競馬と違うて、そこには多少の“八百長”があってもエエんや。それもそのハズ、元々は馬の能力を比較したり、ギャンブルとしての意味合いよりも、神事としての意味合いが強いさかい、悪い結果にならへん様、本番前に打ち合わせをする事もあるんや。そやから、現在の“競馬”とは、意味合いがまったく違うんや。
シ:今年は、その西洋式の近代競馬が日本で挙行される様になって150年の節目とあって、JRAでは特設サイトを設けて、その歴史を振り返る企画を展開してます。
カ:中央競馬って、つまりは西洋式の競馬がルーツであって、地方競馬はむしろ、各神社での神事を公営ギャンブル化した経緯があるんですね。
グ:そもそも、公営ギャンブルとしての地方競馬自体は浦和競馬場が発祥であり、しかも公式に始まったのは戦後の事。それ以前は各地の神社での祭礼としてであり、その名残…というか、その意味合いを留めている“奉納競馬”として有名なのが、福島の相馬野馬追だったり、上賀茂神社での競馬(くらべうま)神事だったり…競馬こそやらないが、今でも伊勢神宮にはない宮・外宮に二頭ずつ、神馬が月に3回(1日・11日・21日)、早朝の神宮に宮司とともに参見する光景が見られるんだぜ。
ノ:確か、すみよっさん(住吉大社)にも神馬を飼うとったなぁ…
シ:ま、皇室も結構“馬好き”ですし、特に現在の天皇は皇太子時代から競馬好きで有名で、2005年にはついに、在位の天皇として初めて、東京競馬場へ行幸啓されたんですよ。
栗:確かヘヴンリーロマンスちゃんが勝ったレースだったおな。
シ:そうです…という訳で、今日の一杯は、ホワイトレディ。ドライジンをベースに、コアントローとレモンジュースを加えてシェークした、柑橘系の香り高い爽やかな一杯です。ちなみに、ベースがブランデーだとサイドカー、ウォッカだとバラライカになります。
栗:ん？ウォッカちゃんは確か、2007年のダービー馬の名前だお。
シ:オグりん、飲み過ぎw