迷馬の隠れ家 はてな本館

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マーティの真面目にプライオリティー 2012年10月号(知っておきたいiPS細胞の基礎知識)



マーティ(以下テ):ども、マーティです。ついに、山中教授、ノーベル医学生理学賞を受賞されましたね。
アッシュ(以下ア):緑壁のアッシュだ…ほう、iPS細胞の研究が、ついに世界で認められたって事か。
テ:ただ…困った事に、一部の医学博士がその功績にあやかろうと、先走った発言が問題になっています。
ア:いわゆる、“臨床試験”をやったとかやってないとかの話だな。
テ:その件に関しては、詳細がわかり次第解説しますが、今回は以前さらっと紹介したiPS細胞に関する基本的な知識を、なるだけ解り易く紹介していこうと思います。

ア:正直な話、この“iPS細胞”ってヤツは、一体どこが凄いんだ?いまいち、ピンとこないんだが…
テ:iPS細胞とは、大まかに言えば“多機能幹細胞”というモノで、基本的には、皮膚等の体細胞にいくつかの遺伝子情報を組み込んで培養し、様々な組織や臓器を生み出す優れモノとして注目されている、クローン技術の核となる細胞の事です。ま、前回の解説ではブタやマウスの体細胞を使って…と解説しましたが、現在では応用技術としてヒトの体細胞からも作れる様になっているとの事ですが、現時点では実験上での話であり、臨床試験をやっている訳ではありません。
ア:つまり人工的に、しかも様々な臓器や組織に作り変える事ができる細胞って事か。
テ:現時点では、これを使って人工的に精子卵子を作り上げる応用技術もあるそうで、マウスを使った実験で、正常な子供を出産させる事にも成功しています。
ア:なぬ、精子卵子も作れるのか?!?!
テ:先程も言いましたが、あくまでマウスによる生体実験での話です。コレがすぐ、人間の不妊治療に繋がる訳ではありませんし、第一、倫理面から言って、そんな危険な事をする産婦人科医は、現時点ではいないでしょう。
ア:だよな…ふぅ、マジでそんな事すれば、おっかない話だよ。
テ:でも、実際に不妊で悩んでいる夫婦であれば、これは“希望の光”でもあります。それを望むかどうかは、人それぞれかと…
ア:要は、生殖機能を代用する事も可能だが、倫理面を考えれば、その為の臨床試験は避けるべきだという意見もあるって事だな。
テ:その通りです。また、前回にも解説しましたが、“万能細胞”であるが故の弊害として、癌細胞化する場合もあるのです。
ア:考えてみれば、確かにそうだな。万能だからこそ、いい面ばかりではなく、悪い面もある…軍事兵器開発も、それが民間利用に転化できるヤツならともかく、そうじゃないヤツは、いろいろ厄介なのと一緒って事か。
テ:また、これは遺伝子操作によって生み出されたモノである以上、そのデータは患者の各個人データを基に作ってる為、他の人の細胞で作れば、当然ながら拒絶反応を引き起こします。つまり、iPS細胞で作られる組織は、全て患者の体細胞から作られたモノであり、その患者“専用”の移植組織だって事です。ですから、その細胞遺伝子そのものに問題があると、折角組織培養で新しい臓器を作り移植したとしても、何らかのカタチで再発する可能性もある…という訳です。
ア:だが、それによって延命や完治平癒も可能だって事だよな?
テ:そうです。現段階では、網膜や皮膚、心筋等の“組織再生移植”が注目されていて、また、早いうちに臨床試験も行われるであろうと言われています。また、FOP(進行性骨化性線維異形成症)という難病で苦しんでいる患者にとって、iPS細胞を使った実験でその発症のメカニズムが解明できれば、その治療に役立つと期待されています。(この難病に関する詳しい事は、こちらをご覧ください。)
ア:つまり、様々な遺伝子異常による疾患の治療にも役に立つ…という事か。
テ:それ故に、医学的な観点での“悪用”が懸念される“発明”ともいえるんです。
ア:…件のクローン培養による“人工生命体”を作り上げる事もできる訳だから、必然的にそうなるって事か。
テ:はい。ですから…現時点で人間の不妊治療に用いられる事もないでしょうが、技術が進めば、そうなる可能性もあります。ですから、単に研究成果が評価された事を喜ぶだけでなく、それが結果的に不幸な方向へ行かない様、注視していく事も必要なのです。
ア:生命の神秘を科学的に解明できたからといっても、それをどう使うかによって“善”にも“悪”にもなるって事を、常に言い聞かせてなければいけないって事か…
テ:山中教授には、素直にノーベル賞受賞に関して、喜び申し上げます。ですが、これはボクらから一言申し上げるなら、これを医療現場で悪用されない様、そして、多くの難病と戦っている患者の助力になる様、これからも精進してください…それが、先に逝った者としての願いです。
ア:そうだな…どんな技術も、それが生ける者の幸福に繋がるモノであれば、その為の犠牲は無駄ではないと思う。けど、それを過度に恐れたり、忌み嫌い続けるのであれば、そこで無駄死にになる。だからこそ、今までの失敗を無駄な事として捨てるのではなく、今一度、自分自身を諌める礎として見直す事も忘れないでくれと言いたいね。

テ:という訳で、今月はここまでです。お相手はボク、マーティと…
ア:緑壁のアッシュでお届けしました。