深夜食堂“FLAT RIVER”2011 第二夜

マーグ(以下グ):昨日の話で角煮の下処理方法を教えてなかったなw 先にやっとかねぇと、味が染込まないわ、仕上がりが脂っこくって喰えたモンじゃなくなるからな。豚バラブロックは、そのままだと調理しにくい。だから、鍋に入る大きさに切って、水と酒(日本酒で良いぞ)、香味野菜(最低でも長ネギとショウガ)、塩を一緒にいれて、沸騰してから1時間以上、中火で茹でて、一晩置いて余分な脂とあくを取ろう。こうすると、肉も柔らかくなるし、イヤな臭みも消えるんだ。あ、茹で汁がもったいないなぁ…って思ったら、そこに昆布と香味野菜とスパイス(最低でも粒こしょう)、骨付きの鶏肉(できれば手羽元や手羽先)を追加して煮込んでみな。鶏肉の旨味を加えたラーメン用スープが出来上がるぜ。鶏肉は後で、小麦粉とスパイスをまぶして高温の油で揚げれば、フライドチキンの出来上がりだぜ。

ナイン(以下ナ):おや、今年も営業してるのかい？
グ:…いらっしゃい。丁度、フライドチキンが揚がったトコだぜ。
ナ:いや…僕は脂っこいのは、ちょっと…
グ:んじゃ、ちょっと揚げる前の鶏肉を使って…オーブンで表面をカリっと焼いて、コレを解して、水菜やレタス、一緒にローストしたプチトマト、刺身のつま用に刻んだニンジンを合わせて…ローストチキンサラダの出来上がり。ドレッシングは、レモン汁とオリーブオイル、みじん切りしたパプリカとパセリを利かせたイタリアン風でどうぞ。
ナ:お、これは意外とさっぱりだね。
グ:ま、ソースやドレッシングに関しては好みだから、自分の好きな味で食べる方が美味いんだぜ。
ナ:だとしたら、僕は柚胡椒を使って欲しかったかなぁ…
グ:おっと、それは失礼だったなw
ナ:あ、いや…その…

グ:ところでよう、マスターが言うには、最近、児童養護施設に“タイガーマスク”とか、漫画やアニメのを名乗ってランドセルや文房具を送る人がいるらしいんだけど、ナインはどう思う？
ナ:う〜ん、やっている事自体は良い事なんだろうけど、でも、ちょっと違和感を感じるね。
ｶﾞﾗｶﾞﾗ…
チルト(以下築):こんばんは…おや、先客がいるのか。
グ:よう、チルト。
ナ:あ、席は空いてますから…
築:あ、マーグ、私は鶏料理ならなんでも良いぞ。
グ:んじゃ、フライドチキンの下にレタスや千切りキャベツを敷いて、ケイパーと茹で卵、タマネギ等をみじん切りしてマヨネーズに加えたタルタルソースで…チキン南蛮風サラダ一丁上がりw
築:どれどれ…お、この鶏肉、キチンと下処理ができているな…ﾓｸﾞﾓｸﾞ…っと、さっきの話だが、匿名による慈善運動がどうのって事だな。
ナ:ええ、そうなんだけど…でも、時と場合によっては、迷惑な場合もあるんじゃないかなぁ…って思うんですよ。
築:しかし、この不況の中、就学に必要な文具も買えない子ども達もいるのは事実だし、特に養護施設に預けられている子ども達は、親の一方的な都合で、まともな生活を送れなかった子が殆どだからな。まして、養護施設によっては、運営そのものがギリギリの状態で、施設内の子ども達に充分な施しができない所もある…そういった施設にとって、物資援助だって充分有難い話じゃないか。
ナ:とはいえ、それだったら、金銭でのサポートの方が、一番有難いのじゃないかなぁ…ランドセルや文房具は、ある意味消耗品だし、人数分贈呈できてるとは、思えないもん。
グ:おっと、金銭授受の場合、贈与税や法人税等の税務的な問題があって、匿名で行う事は、不可能に近いぜ。
築:そうそう…マーグの言う通り、物納の場合は税務署も黙認してくれるが、明らかな金銭授受があった場合、送り主自身も調査対象になりかねないからね。日本の税制は、基本的に直接納税を主体にしているから、直接金銭の遣り取りがあった場合、たとえ善意の寄付をやったとしても、金額によっては、その資産を勘繰って、追徴課税を言い渡される危険性がある。
ナ:そっか…日本の場合、“寄付するカネがあるなら、国に収めよ”な論調がまかり通ってるんだっけ。
グ:そうだよな。
築:欧米諸国では、慈善運動に関わる諸経費は、実質非課税だからね。(注:イスラム圏でも、戒律による慈善運動を富裕層に義務付けている)社会保障を国や自治体が行うのではなく、事業者や大手企業が全てを賄い、それを運用してる。本来、社会保障の肝要は“社会全体で支え合う”事であって、そのための費用をどうするかで、税金の使い方も変わってくる。
グ:だな。公共事業に費やすのなら、その分で不足する税収を、民間に委託し、それを行う事業所の法人税等は減免してやってこそ、トータルバランスが取れるんじゃないかな。
ナ:でも、それができないから、税金で…ってなる訳でしょ？
グ:だ〜か〜ら〜、そこんトコを諸外国での税金事情を研究し、活用してこそ意味があんじゃん。
築:正直、今まで年金や社会保険等といった、公的基金による様々なサービスに依存しすぎた結果が、昨今の財政難を招いた…と言っても過言ではないと思うね。今こそ、そういった社会の仕組みそのものを変革させる時期じゃないかな。
グ:ま、損害保険会社も、高齢者の交通事故が増えた事を受けて、自動車保険の掛け金の見直しをやるみたいだし、“高齢者厚遇”という社会のあり方は、少子化が深刻になった今の日本では、もはや破綻してるんじゃねぇかな。
ナ:そういう意味では、我々の場合、存命であったなら、この問題に直面してる事になりかねないね。
築:確かに…